微笑みに出逢う街角 | ナイト・オン・ザ・プラネット

微笑みに出逢う街角

微笑み 足が不自由な夫と暮らす中年の主婦オリビア。家では夫の家政婦のような生活を送っているが、毎週公園へ通い隠れてデッサンをしていた。彼女には昔、芸術の都フィレンツェへ留学するという夢があったのだが、そのことを忘れられない理由があった。
有名な写真家の娘であるナタリアはアンゴラの戦場での写真が「TIME」の表紙飾り、前途洋々な女性カメラマン。父の薦めもあり、次の仕事の話もあるのだが、彼女に重くのしかかるある記憶があった。
チェロ奏者のキャサリンは長い演奏ツアーが終わっても、理由をつけては夫と娘の元に戻らない。彼女には暴力的で、母を死に追いやった父親の記憶が強く残り、刑務所にいた彼が出所してきたのだった。

同じ街で同じ時間軸の中で、それぞれが苦しい思いを抱え、葛藤し、見えない出口を探している。
誰しも少なからず持っているであろう、わだかまりというか、空虚な気持ちというか、やり残したような気持ちというか、それらのものをこの3人は深刻に抱えている。

共通するのは芸術指向。何か心に欠けたものがある方が芸術に向くのだろうか。有名な芸術家には破滅指向のひとが結構いるが、その辺りを意識しているのか?
彼女たちに訪れるターニングポイント的なシーンには笑顔の少女が現れる。その屈託のない笑みが、素直な自分を取り戻してくれたのか、自ら取り戻したのか、きっかけをつかんだところなのか、とても印象的。


3人を演じるソフィア・ローレン、ミラ・ソルヴィーノ、デボラ・カーラ・アンガー、それぞれが品のある雰囲気を持って演じている。もちろん役柄も全員芸術的センスを持つ者ばかりなのだが、特にソフィアの、長年培ってきたのだろう、オーラを纏っているよう。ちなみにこの映画は彼女の出演100作目だそう。劇場で見たのは初めてだが、さすがの貫禄!ミラもデボラも十分素敵なのだが、今回はソフィアかな。

ラストで少女の笑顔に対して、微笑みを返す3人の女性の顔が、すがすがしく美しい。


05.08.17 映画館

オリジナルサイト
http://www.hohoemini.com/