大統領の理髪師 | ナイト・オン・ザ・プラネット

大統領の理髪師

大統領の理髪師 1960年代の韓国。ごく普通の理髪師・ソン・ハンモは大統領官邸のある街で平凡な生活を送っていた。しかし、時代は不正選挙、革命、クーデター等、激動の時代。そんなある日、彼は側近たちの諍いに巻き込まれたあげく、大統領専属の理髪師に任命されてしまう・・・

人の良い理髪師が、ある日突然大統領官の専属理髪師になってしまうこの物語、彼の目を通して、この時代の不安定な政権の様子を描いている。

彼自身は、専属であっても身分は一般市民のまま。官邸に行けば自分の身分をわきまえながら行動しなければいけないが、慣れで気がゆるむと取り巻きにどやされるのだが、その高圧的な態度が政府の性格を物語る。
世間では北朝鮮の工作員が持ち込んだとされるマルクス病(下痢)が流行、これにかかると工作員と接触したとされ、拘束、拷問を受ける始末。これにより人々は疑心暗鬼に陥る。そんな中、ソンの息子も捕まってしまうのだが、政権内の権力争いに巻き込まれて後々尾を引くおおごととなる。

運命なのか、ことごとく時代の波に巻き込まれながらも、しぶとく、一生懸命生きていく彼の周りを時代が通り過ぎていく。彼の場合はかなり係わってしまうことになるのだが、多かれ少なかれ皆、係わったり巻き込まれたりするのだということを改めて感じさせる。
日本人はとかく、政治に無関心だが、こんな現実があることを考えると、最低投票ぐらいは行かなきゃいけないなと思う。

ソン・ガンホがちょっとコミカルに気弱で人情的な庶民である主人公を好演している。

主人公が踊らされているようで、実は権力者が踊らされている、そんな皮肉もこの作品には含まれている気がする。


05.08.04 映画館

オリジナルサイト
http://www.albatros-film.com/movie/barber/