故郷の香り | ナイト・オン・ザ・プラネット

故郷の香り

故郷の香り 故郷を離れて北京に住むジンハーは、恩師に頼まれ、揉め事を収めるため10年ぶりに山間の村に帰ってきた。目的を果たし、恩師と移動中、橋ですれ違った一人の女性。足を引きずりながら泥だらけで大荷物を運ぶ彼女は初恋の人、ヌアンだった。久しぶりの出会いに、彼女の変わり様に衝撃を受けた彼は、帰宅を先に延ばし、翌日彼女を訪ねる。そこで目の当たりにしたのは、口の利けない村ではさえない、変わり者的存在だった男ヤーバと結婚して、10歳になる子供もつ母親になっていた・・・

初恋の人との再会を、昔の思い出の映像を差し込みつつ、今の現実を描いている。
過去の映像は明るいトーンの映像で、幼なじみ同士の仲の良い頃から、ヌアンを意識したことや、失恋したこと、都会の大学に合格したこと、そして別れと、ありがちな幼なじみの男女の成長と淡い恋心、そして悲劇を経て、大人になっていく中でのすれ違いまでが描かれる。
現在の映像は暗いトーンで終始雨模様のシーンが続く。久しぶりの再会で初めはぎこちないやりとりが続くが、徐々に思いを募らせていく。しかし、10年の間に二人についたいろいろな現実的しがらみが微妙作り出す微妙な距離を描いている。特に口の利けないヤーバの存在、どこか冷めているようで繋がっているヌアンとの関係が深い。

初恋は思い出の中のものだということを、簡単には戻れないのだということを言いたいのかな。
昔の雰囲気をそのまま残した田舎が舞台となっているので、都会であか抜けたジンハーと田舎の生活に染まったというか、生活レベルも墜ちているヌアンが対照的。

長く生きていると思い出もたくさんできるけど、捨ててきた物も多いのだなということを感じさせる。
安易に再会して恋に落ちてしまわないところが現実的で良いかな。
奇をてらったところのない正攻法な演出なので淡々としている映画が苦手な人には向かないかも。


05.08.04 映画館

2003年/中国、109分
監督:フォ・ジェンチイ
出演:グオ・シャオドンリー・ジア香川照之